マーケティングに関わる多くの担当者が様々なデータに興味を持っていることはご存知のことと思います。良い意思決定はデータに基づいて行われるので、これは当然の傾向と言えます。
ところで皆さんはソーシャルリスニングのデータを活用していますか?競合他社が何をしているかや、自社製品やサービスに関するUGC(ユーザー生成コンテンツ)をSNSで探したことがありますか?あるいは、時々Twitterで自分の会社のエゴサーチをしたことはありますか?
上記の質問のいずれかに「はい」と答えた方は、すでに何らかの形でソーシャルリスニングを行っていることになります。
しかしせっかくなので今回の記事では改めて、ソーシャルリスニングとは何か、戦略策定のための5つのステップ、支援ツールについて、など、ソーシャルリスニングに関して網羅的に解説したいと思います。
目次
- ソーシャルリスニングとは何か
- ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングの違い
- ソーシャルリスニングが重要な5つの理由
- ソーシャルリスニング戦略策定5つのステップ
- ソーシャルリスニングを可能にするツール5選
- ソーシャルリスニングについてのFAQ
- 今回のポイント ソーシャルリスニングの効果
ソーシャルリスニングとは何か
最もシンプルに説明すると、次のようになります。
ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディア上で、みなさんのブランド(製品やサービス)について、人々が何を話しているのか、そしてなぜ彼らがそのようなことを言っているのかを、「聞く」プロセスのことです。
あるいは、もっと専門的な言い方をすると、ソーシャルリスニングとは、多彩なソーシャルメディアプラットフォーム(SNSなど)で自社ブランドに関する言及を追跡し、それらの洞察を分析して「隠れた宝物」を発見し、データに基づくより良い意思決定ができるようにするプロセスのことを指します。
ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングの違い
ソーシャルリスニングとソーシャルモニタリングは、その名前から同じもののように思われるかもしれませんが、そうではありません。
ソーシャル・モニタリングは、ブランドの@メンションやユニークな#ハッシュタグなどの指標を利用してデータを収集することを意味します。また、業界に関するデータを収集することも意味し、業界のトレンドや競合他社を追跡することも含まれます。
しかし、ソーシャルリスニングは、割合や数字だけでなく、人々が皆さんのブランドや競合他社についてどう感じているかを直接見ていきます。より定性的に見る、と言うこともできるかもしれません。
みなさんのブランドがどれだけ言及されたかという数字だけを追う(ソーシャルモニタリング)のではなく、これらの関連する会話を追跡し、そこから学ぶのです。
長期的には、ソーシャルリスニングは、より良い決定を下し、実行可能なステップを持つ戦略を作成するのに役立ちます。
新製品を発売したり、サービスをアップグレードしたりすると、ソーシャルメディア上の言及が雪崩のように一気に押し寄せるかもしれませんが、それらを調べ、肯定的か否定的か中立的かを一つ一つ分析することは、ソーシャルメディアセンチメント分析と呼ばれ、ソーシャルリスニングの一部になっています。
ソーシャルリスニングが重要な5つの理由
ソーシャルリスニングの重要性については様々な観点で語ることが出来ます。以下に詳しく説明します。
消費者発の情報から直接インサイトを得る
ソーシャルリスニングが重要である理由の最たるものは、人々が皆さんのブランド(製品やサービス)について話していることを聞くことで、貴重なインサイトを得ることができるという点にあります。
ソーシャルリスニングで得られる声は、彼ら自ら発しているものです。それらを直接見聞きすることで得られる情報は、従来のマーケティングリサーチなどで得られる情報とは違い、おそらく雑多なものですが、洞察を得られる機会も多いはずです。
オーディエンスをよりよく知り、彼らとエンゲージする
オーディエンス(ソーシャルメディア上で皆さんに触れている消費者)に影響を与えるには、彼らを理解することが重要であり、ソーシャルリスニングはそれを実行するための簡単でほぼ無料の手法です。オーディエンスの好みを決めつけるのではなく、各ソーシャルメディアを注意深く監視し分析することで、オーディエンスの内面を知り、特定のマーケティングキャンペーン、コピー、製品・サービスの更新にどう反応するかを予測することができるのです。
競合他社に差をつける
SNSを使ったソーシャルリスニングですが、さらにもう一歩踏み込んでみるのはどうでしょう?ソーシャルリスニングは、競合他社や業界をモニターし、そこから学ぶことでもあります。競合他社が何をしているのか、どのようにオーディエンスと交流しているのかを見てみましょう。また、これらの会話に大胆に飛び込んでみましょう(ペプシ対コカ・コーラのやりとり、あるいはバーガーキング対マクドナルドを考えてみましょう。おそらく皆さんに何かインスピレーションを与えてくれるはずです)。
製品開発に活かす
みなさんの業界を俯瞰することで、競合他社を追跡するだけでなく、業界がどのような方向に進んでいるのかについての貴重なインサイトを得ることができます。何が人々の役に立ち、何がそうでないか、何に最も満足し、何を避けているのか。彼らが最も満足するものは何か、そして何を避けているのか。これは、あなたの製品やサービスを顧客の方向性に合わせて修正し、形成するのに役立ちます。
カスタマーサポートとサービスを改善する
一度ブランドについてオーディエンスが言っていること(肯定的な顧客フィードバックと否定的な顧客フィードバックの両方)に耳を傾け始めると、どのように改善すべきかの明確な方向性を得ることができます。人々の不平や不満の声は、企業やブランドが直面している問題を解決に導く機会となり得ます。
ソーシャルリスニング戦略策定5つのステップ
ソーシャルリスニングの重要性についてご理解いただけたところで、ソーシャルリスニングをどのように始めればよいかを説明します。
ここでは、ソーシャルリスニングを始めるためのいくつかの重要なステップをご紹介します。
1. ソーシャルリスニングツールの選択
ソーシャルリスニング戦略に適したツールを選択することは、最も重要なポイントの一つです。
2つや3つ、あるいはさらに多くの異なるソーシャルメディアチャネルにまたがる何百万ものソーシャルメッセージを手作業で見ていくことを想像してみてください。時間がかかるだけでなく、戦略的なアプローチがなければ、どこに何を配置したのかわからず、さまざまなExcelシートで迷子になるのが目に見えているはずです。
この後のセクションで、これらをサポートしてくれる素晴らしソーシャルリスニングツールについて詳しく説明します。
2. 目標を決める
好みのツールを選んだら、次に重要なのは、何を聴くか、あるいは目標を決めることです。
あなたの目標は何ですか?
このことについて少し考えてみましょう。
皆さんは、どのようなことについて市場からの情報を求めていますか?:
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- ブランドの健全性と評判
ブランド(製品やサービス)の全体的な印象(好印象/悪印象)、およびその理由を知りたい。
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- 業界について
業界の方向性や今後の製品開発の方向性を知りたい。
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- 競合他社とその動向
競合他社に差をつけるために彼らの動向を知りたい。
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- 主要なソーシャルメディア利用者
トレンドやソーシャルメディアデータから、より効果的な戦略やコンテンツを作成したい。
これらの目標は1つ、でも複数でも構いません。
なおゴール設定で忘れてならないのは、あなたのチームと話し、俯瞰し、さらに達成したいことを書き出し、明らかにしていくことです。
3. ソーシャルメディア・プラットフォームの選択
3つ目のステップは、どこから情報/データを取得するかを選択することです。
利用可能なすべての情報源からデータを取得することは良いアイデアかもしれませんが、一般的には無関係なデータによって皆さんとソーシャルリスニングのプロセス全体が圧倒されてしまう可能性があります。
そのため、全ての情報を総当たりする代わりに、どのソーシャルメディアチャンネルがあなたのビジネスにとって最も価値のあるデータを保持しているかを考えてみてください。オーディエンス(皆さんの製品やサービスについて言及している消費者)がどこにいるのか、あるいはどこで会話をしているのかを調べ、そこからデータを引き出すのです。
4. リスニングのテーマとトピックを選ぶ
4つ目のステップは、事前に決めた目標を達成するために、選んだツールで、最適なソーシャルメディアチャンネルで、どんなトピックをリスニングするかを選択することです。
特定のキーワード、フレーズ、ハッシュタグ、ハンドルネーム、ユーザーからのメンションなどのクエリー(検索のための語句)を構築する必要があります。
また、さらに一歩踏み込んで、除外するワードなどを設定してより集まる情報の抽出精度を上げることもできます。
5. データを収集し、結果を測定する
戦略を確定し、すべてを設定して十分な期間データを収集します。そして最後のステップは、設定した目標が今回のソーシャルリスニング戦略によってがどれだけ成功したかを分析することです。収集した情報によって目的を達成できたかどうかを確認するところまで、やりきることが重要です。
ソーシャルリスニングを可能にするツール5選
ソーシャルリスニング戦略の作成と実施に不可欠なステップは、適切なソーシャルリスニングツールを使用することです。
十分な情報に基づいた選択をするために、私たちは最も人気のあるベスト5のソーシャルリスニングツールのリストを作成しました。
それでは、市場で最も優れたツールをご紹介しましょう。
1. EmbedSocial エンベッドソーシャル
EmbedSocial(エンベッドソーシャル)は、全世界で150,000人以上、日本国内では600社以上(2022年9月現在)のユーザーが、オンラインレビュー活用、ハッシュタグキャンペーン、SNSコンテンツ表示ツールとして活用しているUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームです。
主要ソーシャルメディアから投稿やレビューを収集・レポート出力が可能
EmbedSocialは主要ソーシャルメディアのほぼすべてから投稿、レビュー、ストーリーを収集し、一つのレポートしてcsv等のファイル形式で出力することが出来ます。期間や情報源によって特定のデータを抽出してレポーティングすることも可能です。
ウェブサイト上のウィジェットを活用したリスニングが可能
またEmbedSocialは、集めた投稿やレビューを一つのウィジェット化して、ウェブサイト等に埋め込み表示することが可能ですが、このウィジェットを利用した分析も可能です。
例えば、ウィジェットを埋め込んだ先のLP上でクリック数を計測してどの投稿が消費者の興味を引いたかを比較してみたり、あるいは、ウィジェット上にレビューを書きこむボタンを設置してより多くの声を集める、ということが実現できます。
このツールを使うために難しい操作は必要ありません。分かりやすいインターフェースで、どのようなタイプのマーケティング担当者でも使うことが出来るように設計されています。
EmbedSocialがソーシャルリスニング戦略をサポートする強力かつ大変使いやすいプラットフォームであることは間違いありません。
2. Talkwalker
Talkwalkerは、ブログ、ニュース・レビューサイト、ビデオ、ソーシャルネットワークを分析し、一つのダッシュボードですべてを行うことができる大変強力なツールです。
このツールは1億5千万のソースからデータを取得し、これらの会話は50以上の強力なフィルタの助けを借りて分類され、必要なデータに到達することができます。
製品レビューによると、Talkwalkerは強力な可視化と分析に焦点を当てた能力を持っており、ダッシュボードは簡単に作成することができるツールで、その一方、使いこなすのが少し難しくユーザーフレンドリーではない可能性がある製品のようです。
3. Sprout Social
Sprout Socialはオールインワンのソーシャルマネジメントソリューションであり、単なるソーシャルリスニングツールではありません。このツールは、お客様がオーディエンスとより密接につながり、パブリッシングワークフローを合理化し、コラボレーションを改善し、データを強力な洞察に変えることを可能にします。
簡単に言うと、「ソーシャルメディアマネージャーのワンストップショップ」です。
このツールには、月額89ドルから始まる3つの価格レベルがあり、製品レビューによると、セットアップや他のツールとの統合が簡単で、ユーザーフレンドリーで、多彩な機能を満載しているそうです。
4. Brand 24
Brand 24は、個人が小さな規模のブランドをトラッキングするのに適したツールですので、初心者の方には最適です。
月額50ドル以下で、3つのキーワードと2000メンション/月を追跡できます。1ユーザーアカウントで、データは12時間ごとに更新され、FacebookとInstagramの統合、ソーシャルメディア、ニュースレター、ポッドキャストのモニタリング、センチメント分析、そしてモバイルアプリを備えています。
製品レビューによると、このツールの長所は、完全なツールキットを提供すること、レポートが詳細かつカスタマイズ可能であること、そして手頃な価格であることで、逆に短所は、コントロールパネルがそれほど単純ではないこと、ネガティブキーワードの使用がそれほど正確ではないこと、最初の設定プロセスが少し難しいことです。
5. Hootsuite
Hootsuiteは、175カ国以上、2100万人以上のユーザーを持つ最も人気のあるソーシャルメディア管理ソフトウェアの1つで、小規模なビジネスから大規模な企業まで幅広いユーザーに適しています。
4つの異なる価格プランがあるこのプラットフォームによって、マーケティング担当者はコンテンツをスケジュールし、様々なソーシャルメディア上で投稿を共有し、あなたの作業負荷を合理化し、顧客とのコミュニケーションを配信し、監視し、収集したデータを分析することが可能です。
製品レビューによると、このプラットフォームは、すべてのソーシャルチャンネルをまとめることができる素晴らしいツールです。ただし利用時には少し混乱することもあるようで、また基本的なパッケージのプランでは機能が制限少なすぎたり、カスタマーサポートは対応に時間を要することもあるようです。
ソーシャルリスニングについてのFAQ
Q. ソーシャルリスニングの例は?
Semrush社(SEO支援)の事例をご紹介します。この例では、同社のチームが顧客やターゲットオーディエンス(製品やサービスの利用者)のツイートに反応し、問題解決まで導こうとしている様子が見て取れます。
おそらく同社はソーシャルリスニング戦略に従い、プロセス全体を容易にするツールを使って、目標に沿った形でこれを実行しているのでしょう。
Q. ソーシャルリスニングの3つのタイプとは?
ソーシャルリスニングの3つのタイプは以下の通りです。
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- ベーシックソーシャルリスニング basic social listening
オーディエンス(ソーシャルメディア上で皆さんに触れている消費者)に耳を傾け、そこから学びます。
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- ディープソーシャルリスニング deep social listening
業界の多様なトピックに関するソーシャルメディア上の投稿を幅広くカバーする高度なリスニング手法です。
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- 複合型ソーシャルリスニング combined social listening
ソーシャルメディアチャネルのリスニングと業界に関する深いソーシャルリスニングを組み合わせたものです。
Q. ソーシャルリスニングの目的とは?
上記で述べてきたように、ソーシャルリスニングは様々な目的を達成するために行うことができます。しかし、ソーシャルリスニングの主な目的は、企業が自社のブランド/製品/サービスを取り巻く会話を理解することにあります。
Q. ソーシャルリスニングツールとは何か?
ソーシャルリスニングツールは、オンライン上の自社ブランド/製品/サービス、参入している業界、競合他社、その他関連するトピックに関するオンライン上の会話や発言をモニターし分析するためのソフトウェアです。
Q. ソーシャルリスニングに関するKPIとは?
ソーシャルリスニングに関する主なKPIは以下の通りです。
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- ブランド認知度
ブランドがどれだけ認知されているか、リーチを通して測定します。
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- 市場シェア
競合他社と並んで貴社ブランドがどれだけ言及されているかをSOV(Share of voice)で測定します。
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- 顧客満足度
ポジティブ/ネガティブ/ニュートラルのフィードバックの比率をセンチメントスコアで測定します。
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- リード数
コンバージョン率で測定されるリード(見込み客)の数で測定します。
今回のポイント ソーシャル・リスニングの効果
業種に関係なく、ビジネスを成功させるには、顧客やそのニーズ、問題を完全に理解することから始まりますが、ソーシャルリスニングはこれをサポートする完璧な戦略です。
ソーシャルメディア上の会話を「聞く」ことで、顧客と業界をより深く理解することができます。また、ネガティブな感情をいち早くキャッチし、炎上等のリスクを未然に防ぐことができます。
さらに、競合他社に先んじ、製品・サービスのさらなる開発への道筋を示すことにもつながります。
ソーシャルリスニング手法で顧客の声に耳を傾けることは、貴重な時間、お金、労力を大幅に節約することになるのです。
この記事が、みなさんのソーシャルリスニング戦略の策定や見直しのお役に立てば、幸いです。