「店舗名で検索しても、公式サイトとGoogleマップしか出てこない」――そんな状況は、集客の機会損失につながっているかもしれません。店舗情報が他サイトやSNSにどれだけ言及されているかを示す「サイテーション」は、MEO対策や信頼性向上において見逃せない要素です。本記事では無料で始められるサイテーション施策と、その効果の考え方について実践的に解説します。
サイテーション(Citation)とは、インターネット上で店舗名や住所、電話番号といった情報が「言及されている状態」のことを指します。リンクが貼られていなくても、例えばブログやSNS投稿・レビューサイトなどにお店の名前などが掲載・言及されていれば、それはサイテーションとして認識されます。
こうした言及は、Googleにとって「その店舗や事業者が実在し、他者に知られている」という信頼性の証拠になります。
Googleは、ローカル検索結果の順位を決定する要素として、「関連性」「距離」「知名度(視認性の高さ)」の3つを公表しています。この「知名度(視認性の高さ)」の一部として、サイテーションが使われていると考えられています。
このような状態は、Googleから見て人気が高く・多くの人から信頼されている地域ビジネスとして評価されやすくなります。
被リンク(外部サイトから自サイトへのリンク)は従来のSEOで強く意識されてきた要素です。ただし現在のGoogleは、リンク購入や過剰な相互リンクなど人為的なリンク操作をスパムと見なす傾向が強まっています。
一方でサイテーションは、自然な言及であればペナルティの対象にもならず信頼性を裏付ける要素として純粋に評価される傾向にあります。被リンクが「作られた評価」だとすれば、サイテーションは「自然に広まった信頼の証」と言えるでしょう。
項目 | 被リンク | サイテーション |
---|---|---|
定義 | 他サイトから自サイトへのリンク | 他サイト上での店舗名・住所・電話番号などの言及 |
Googleの評価軸 | 評価されるが、質や自然さが問われる | 信頼性や実在性のシグナルとして評価される |
施策の難易度 | 相手サイトの協力が必要/費用が発生することも | 無料で増やせるケースが多い |
リスク | リンク購入・相互リンクなどはスパム認定の可能性 | 自然な言及であればペナルティ対象にならない |
本質的な価値 | 一部はテクニックで作られた評価 | ユーザーや地域社会からの信頼の可視化 |
ローカルSEOが主な活用領域とはいえ、サイテーションには以下のような副次的メリットもあります。
他サイトに社名やサービス名が言及されることで、検索結果に多様なメディアが表示されます。これにより、ユーザーに対する信頼感や企業の露出度が高まります。
最初はサイテーションのみでも、名前が広がることで認知が高まり、やがてメディア掲載や自然なリンク獲得につながる可能性があります。
第三者メディアで言及されていること自体が、Googleに対して「信頼されている存在」である証拠となり、検索品質評価の文脈でもプラスになります。
「サイテーションはMEO対策で重要」と言われながらも、実際に対策を講じている事業者はそれほど多くありません。その背景には、検索順位への影響が目に見えづらいことや、「何をすればいいのか」が分かりにくいという課題があります。
では、なぜ多くの店舗がサイテーション対策を後回しにしてしまうのでしょうか?その理由には、以下のような構造的な問題が存在します。
特に地域密着型のビジネスや口コミが強い影響をもつ業種(美容、整体、観光、飲食など)では、地元の情報サイトやSNS・ポータル媒体などでの露出は、Googleからの評価だけでなく潜在顧客がネットで検索し来店を決定する動機としても重要な要素にもなります。
サイテーション(言及)を増やすには、「他者があなたの店舗について話題にしやすくなる設計」が不可欠です。ここでは、無料かつ今日から始められるサイテーション獲得の実践施策を5つに絞って紹介します。
外部メディアに店舗情報が掲載されること自体が、サイテーション獲得に直結します。
飲食店、美容室、観光施設など、業種に応じた専門ポータルサイトや地域メディアを活用しましょう。
これらのメディアに掲載されることで、店舗名や住所、電話番号(NAP情報)が外部サイト上に公開され、自然なサイテーションとしてGoogleに認識されるようになります。掲載されている情報が信頼できる媒体であるほど、検索結果への影響も期待できます。
掲載先によっては自動収集型のためGoogleビジネスプロフィールとの整合性が求められることもあります。情報の統一性を意識しつつ、媒体ごとに適した内容を記載しましょう。
UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)とは、顧客や利用者が自らのSNSやブログに投稿する写真・コメント・体験談などのコンテンツを指します。サイテーションとの関係でいえば、これほど自然で信頼性の高い「言及」はありません。
「渋谷の〇〇カフェに行ってきた」「〇〇整骨院でスッキリした」といった投稿がSNS上で増えていけば、Googleにとっては「この店舗は実在し、ユーザーから注目されている」という明確なシグナルとなります。
UGCは一度発生すれば自発的に拡散されやすく、さらに検索結果でも画像やSNS投稿が上位表示されるきっかけになります。自然な投稿を促し、顧客との関係性を深めると同時に、検索上での信頼度も向上させる戦略です。
UGCの考え方や集め方詳細については、以下の記事もご参照ください。
地域密着の情報メディアや小規模なインフルエンサーは「紹介するネタ」を常に探している存在です。彼らに店舗情報を提供することで、自然な形での紹介=サイテーションを獲得できます。
こうした第三者からの紹介は、直接リンクがなくても店舗名・地域名が明記されていればGoogleにサイテーションとして認識されます。エリア性の高いビジネスほど、地域ブロガーやタウン誌との関係構築が長期的な資産となります。
リアルの場に出ることで、SNS投稿や地域ニュースで店舗が取り上げられる可能性が大きくなります。とくに地域イベントや商店街の活動は、思わぬ形でのサイテーション獲得につながることもあります。
参加の様子が地元のSNSユーザーに投稿されたり、地域新聞やWebメディアに掲載されたりすれば、それ自体が強力なサイテーションになります。「活動している実在の店舗」であるという信頼感にもつながり、検索結果に反映されやすくなります。
サイテーションとは他者による言及を指しますが、その前提として「オンライン上での存在感=プレゼンス」が必要不可欠です。誰にも知られていない店舗やサービスが、自然に紹介されることはほとんどありません。まずは自社が、Web上で「確かに存在している」ことをGoogleに認識させることがスタートラインです。
発信量が多く一定の更新頻度が保たれていると、Googleの評価対象にもなりやすくなります。また自社の投稿が他者に引用されたり、まとめ記事に転載されることもあり、二次的なサイテーション獲得の土台になります。
サイテーションは、SEOやMEOにおける信頼性向上のシグナルとして注目される一方で、被リンクのように専用ツールや管理画面で「件数」を直接把握できるものではありません。そのため施策を実施したあとに「実際にサイテーションが増えたのか?」「どのように変化しているのか?」を確認する手段をあらかじめ設計しておくことが重要です。
この章では、誰でもすぐに実践できる5つの無料でできるチェック方法をご紹介します。特別なツールを使わなくても、検索・SNS・レビューの見方を工夫することで、サイテーションの増減を把握することが可能です。
もっとも基本的かつ効果的な方法が、Google検索を使った「目視でのサイテーション確認」です。定期的にお店の名前を検索し、検索結果にどのようなサイトが出てくるかをチェックすることで、外部メディアやブログなどからの言及状況を把握できます。
「検索結果に出てくるページの種類が多様になってきた」「以前なかった記事が増えている」などの変化は、サイテーションが蓄積している証拠です。
Google検索には「すべて」「画像」「動画」などのタブと並んで、「ニュース」タブが存在します。これはニュースメディアに掲載された記事のみを表示する機能で、地元メディアや業界系オンラインニュースなどからの言及を確認するのに非常に有効です。
活用シーン:
通常検索では見つかりにくい「埋もれた言及」も、ニュースタブで絞り込むことで発見しやすくなります。特にメディア掲載はサイテーションの中でも「権威性が高い」ため、定期的なチェックがおすすめです。
SNS上での投稿は、現代のクチコミそのもの。中でも「#店舗名」や「#地域名+業種」などのハッシュタグ検索は、ユーザーがどれだけ店舗を話題にしているかを知る手段として非常に有効です。
SNSの投稿件数は、キャンペーンやイベントと連動して大きく変化するため、「何をしたら投稿が増えたか」を見える化する指標として使えます。
またInstagramでは、写真の投稿時に「位置情報タグ」をつけることができます。この位置タグに店舗名が登録されていれば、ユーザーが訪問時にそれを選択することで「〇〇で撮影」「〇〇に行ってきた」ことを証明する自然なサイテーションとなります。
ハッシュタグとは異なり、来店時にしか投稿されにくい「リアルな体験型サイテーション」であることも特徴です。
Googleマップに寄せられるレビューは、サイテーションとしても評価されやすい強力な要素です。レビュー数の増減だけでなく、レビューの文章内にどのような言及がされているかも丁寧に確認しましょう。レビュー内の文章は、カテゴリと同様にGoogleマップで検索される際のキーワードにもなるためお店の特徴(例:Wi-Fiあり・落ち着いた雰囲気)」などが入っているとより効果的です。
これまで紹介してきたように、サイテーションとは「第三者から自社の名前が言及されること」を意味します。そしてそれをSEOやMEOの成果につなげるためには、単に件数を増やすだけでなく、正確性や一貫性を保つことが極めて重要です。
この章ではサイテーションの質を高めるために、実務の中で特に注意すべきポイントを解説します。
NAPとは、Name(店舗名)、Address(住所)、Phone number(電話番号)の略称で、Googleはこの情報の正確さ・一貫性をもとに「同じ店舗かどうか」を認識しています。媒体ごとに自動取得されている場合や、過去に誤った情報が掲載されたまま放置されているケースもあるため、定期的に各媒体を確認・修正していくことが大切です。
上位表示を狙うために「渋谷 カフェABC」などのように、店舗名にキーワードを詰め込むケースも見られますが、Googleのポリシーではビジネス名には“正式名称のみ”を使用するよう明記されています。
不自然に地域名やサービス名を追加すると、検索アルゴリズム上の評価を下げるリスクがあるだけでなく、掲載媒体によってはポリシー違反として修正や削除の対象になることもあります。
店舗名はあくまで法人登記や看板に記載されている正式なものに統一し、地域名やサービス内容は説明文や投稿で補足するのが理想です。
意外と見落とされがちなのが、店舗の移転・名称変更・電話番号変更などに伴う過去情報の放置です。こうした古い情報が複数残っていると、Googleにとっては「同じ店舗なのか」「信頼できるのか」の判断が難しくなり、検索順位やマップ表示に悪影響を及ぼすことがあります。
サイテーションを増やすだけでなく「間違ったサイテーションを減らす」ことも、ローカルSEOの最適化には不可欠です。
サイテーションは、その性質上「どこで・どのように」自社が言及されているかを完全に把握することは難しく、数値化もあいまいになりがちです。意識して追いかけようとすればするほど、情報の多さと複雑さに圧倒されてしまうこともあります。
しかし、実際の運用において最も大切なのは、すべてを正確に記録し続けることではなく、施策を「継続・改善・中止」すべきかどうかを判断できる状態にしておくことです。
特に小規模な店舗や限られたチームでの運営では、完璧なモニタリングを目指すよりも、簡易的な観察と変化に気づける体制を整えることのほうがはるかに実用的です。数字はあくまで「判断材料」であり「目的」ではありません。数字に振り回されず目的を見失わないことが、長期的な成果につながります。
サイテーションは単なるSEOテクニックではなく、「お客様や第三者が、あなたの店舗について自然に話題にしてくれる状態」をつくるための土台です。
誰かに紹介されるには、それに値する価値が必要です。そして紹介を後押しする情報設計や接点づくりが、日々の運営と密接に関わっています。UGCやレビュー、ブログ記事で店舗名が言及されるというのは、「選ばれた証」であり「信頼されている証拠」でもあります。
完璧なデータ管理や数値化にこだわる必要はありません。
大切なのは「誰にどう話題にしてもらいたいのか?」という視点を持ち、そのための体験や情報発信を、日々コツコツと積み重ねていくことです。
集客は、信頼から始まります。
そしてサイテーションは、その信頼がWeb上に“可視化”されたもの。
だからこそ、マーケティングの最初の一歩として、継続的に取り組む価値があるのです。