近年、SNSの普及とともに、ビジネスにおけるコミュニケーションの手法は大きく変わりました。中小企業にとっても、SNSは顧客との直接的なコミュニケーションチャネルとして、またマーケティングの新しい手法として、無視できない存在になっています。
しかし、「SNSマーケティングを始めたいけど、何から手をつけていいのか分からない」と感じている方も少なくないでしょう。本記事ではそんな皆さんに向けて、SNSマーケティングの基本から実践的な戦略まで、わかりやすく解説していきます。
SNSマーケティングは、ソーシャルメディアの力を借りて企業が製品やサービスを宣伝し、顧客との緊密な関係を築いていく現代的なマーケティング手法です。
Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、TikTokなどの多様なプラットフォームを利用して、ブランドの認知度を高め、消費者との相互作用=エンゲージメントを促進することを目的としています。これは従来の一方通行的な広告とは異なり、双方向のコミュニケーションを重視する点が特徴です。
SNSマーケティングはその目的や方法によって、さまざまな種類や類型に分けることができます。以下に主な種類を紹介します。
コンテンツマーケティングは、情報提供や娯楽を通じてユーザーの関心を引きつけることに焦点を当てます。記事、写真、ビデオなどの有益で関連性の高いコンテンツを提供し、自然な形で製品やサービスへと導く手法です。
このコンテンツマーケティングの一派生形として近年価値が高いのが、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の活用です。顧客が自らの意志で作成し共有するコンテンツは、その真実性と共感を通じて他のマーケティング手法にはない強力な影響力を持っています。
特定分野で影響力のある人物、いわゆるインフルエンサーと提携し、彼らのフォロワーに対してブランドを宣伝する方法です。インフルエンサーが製品を使用する様子を共有することで、信頼と興味を同時に引き出すことができます。
広告を購入してSNS上でプロモーションを行う方法です。ターゲットとなる顧客層に対して精密に設定を施し、効率的にリーチを拡大することが可能です。
ブランド固有のコミュニティを構築し、顧客と直接的にやりとりを行うことを重視します。ユーザー同士のディスカッションを促進し、ブランドへの忠誠心を高めることを目指します。
SNSを通じてカスタマーサービスを提供する手法です。顧客からの問い合わせや苦情に迅速に対応することで、顧客満足度の向上を図ります。
これらのSNSマーケティングに取り入れる際に重要なのは、皆さんの会社やブランドの個性と目指す目標に合致させることです。
例えば、若者向けの製品を扱う場合はInstagramやTikTokを利用したビジュアルコンテンツが効果的です。一方で、ビジネス向けのサービスであればLinkedInでのコンテンツ提供やネットワーキングが中心となるでしょう。
そして企業の戦略に応じて、これらの各種SNSマーケティングは単独で用いられることもありますが、通常は複数を組み合わせて運用されることが一般的です。
SNSマーケティングが生み出す効果は、単に製品やサービスを宣伝する以上のものです。それは、ブランドの個性を表現し、顧客との信頼関係を築き、最終的にはコンバージョンを達成するための戦略的なプロセスです。
ユーザーが生み出す自然な拡散効果を利用し、ターゲティング広告を駆使することで、SNSマーケティングはパワフルな集客ツールへと進化しています。
それはなぜでしょうか。以下にSNSマーケティングが効果を生む理由と仕組みについて、詳しくご紹介しましょう。
SNSマーケティングの成功は、まず中心となる高品質なコンテンツの創造から始まります。このコンテンツは、製品やサービスに関する教育的な情報、興味を引くトリビア、感情に訴えかけるストーリーなど、ユーザーにとって価値あるものでなければなりません。
これには、プロモーションのビデオ、インフォグラフィック、ユーモアを交えた画像、ユーザーのレビューなどが含まれます。
質の高いコンテンツをSNS上で共有することで、初めてユーザーとの相互作用が始まります。ユーザーがコンテンツに反応し、「いいね」やコメントを通じてその価値を認めると、SNSのアルゴリズムはこれを人気のあるコンテンツと判断し、より多くの人々のフィードに表示させます。
この自然な共有と表示頻度の増加が、コンテンツのオーガニックな(自然検索の)リーチを増大させる要因となります。
ユーザーがコンテンツを共有することで、その人物のネットワーク内でさらに拡散が起こります。友人が友人に情報を共有することで、製品やサービスはバイラル的に広がり、それに比例して潜在的な顧客ベースが拡大します。
このプロセスは、信頼できる推薦として機能し、新しい顧客の興味を引き、ウェブサイトへのトラフィックを増加させます。
SNSプラットフォームには、精緻なターゲティングオプションが備わっており、年齢、地域、興味、行動などの基準に基づいて潜在顧客を選定できます。SNS広告は、これらのターゲットに直接アプローチすることで、リーチをさらに拡大し、関連性の高いオーディエンスに対して直接的なコンバージョンを促します。
ユーザーとのエンゲージメントを重視することで、企業やブランドは信頼と権威を築きます。質の高いコンテンツの定期的な共有と、顧客からのフィードバックへの迅速な反応は、ユーザーとの継続的な関係を築き、信頼性のある情報源としての立場を強化します。
この関係性は、ユーザーが自分のネットワーク内でブランドについて言及する際、より良い印象を与えることにも繋がります。
SNSプラットフォームから得られる豊富なデータを分析することで、企業は顧客の行動や嗜好を深く理解することができます。どのコンテンツが最もエンゲージメントを得ているのか、どの時間帯にユーザーが最も活動的なのかなどの情報は、マーケティング戦略の調整に不可欠です。
これにより、投稿スケジュールの最適化、コンテンツのカスタマイズ、さらには製品開発に至るまで、幅広い改善が可能になります。
SNSマーケティングはSNSという新しいメディを活用した手法のため、従来のマーケティング手法では得られなかったメリットを企業やブランドは得ることができます。以下のそのメリットについてご紹介しましょう。
SNSマーケティングの最大のメリットは、企業が直接ターゲット顧客にリーチする能力にあります。従来の広告媒体と比較して、ソーシャルメディアは、企業が特定の年齢層、地理的位置、興味関心、購買行動などに基づいて顧客を絞り込むことを可能にします。
これにより、広告やキャンペーンの関連性が高まり、エンゲージメント率を大幅に向上させることができます。
SNSプラットフォームのリアルタイム性は、顧客との直接的な対話を実現します。これにより、新製品の発表やプロモーション、市場の動向に対する素早い反応が可能になります。
顧客からの質問や懸念に即座に対応することで、顧客サービスの質を高めると同時に、信頼性のあるブランドイメージを構築できます。
ソーシャルメディアを通じて、顧客からの意見や感想は迅速に集めることができます。このフィードバックは貴重な市場データとなり、製品開発やサービス改善に直結します。また、問題が発生した際には素早く情報を提供し、顧客の不安を軽減することも可能です。
SNSマーケティングでは、顧客のオンライン行動を追跡し、そのデータを分析することで、具体的なインサイトを得ることができます。どの投稿が最もエンゲージメントを集めたのか、どの時間帯に顧客がアクティブなのかなどの情報は、将来のマーケティング活動を最適化するのに役立ちます。
SNSマーケティングは、比較的低コストで実行可能なため、特に予算に制限がある中小企業にとって有効です。適切な戦略とツールを用いることで、高い投資収益率(ROI)を実現することが可能です。特にペイド広告を活用したターゲティングでは、費用対効果の高い広告展開が可能となります。
SNSを利用することで、企業は顧客と継続的にエンゲージメントを図ることができ、これが長期的な顧客関係の構築に繋がります。
定期的に価値あるコンテンツを提供することで、顧客はブランドに対してロイヤリティを感じるようになります。このロイヤリティは、顧客がブランドの良い伝道者になる原動力となり、新しい顧客の獲得に貢献します。
効果的なSNSマーケティング戦略を持つ企業は、競争において優位性を確立します。ソーシャルメディア上で活発に活動し、ユニークなブランドの声を響かせることで、市場における自社の立ち位置を強化できます。
SNSマーケティングは、広告、プロモーション、PR、カスタマーサービスなど、企業の全ての外向きのコミュニケーションを統合する力を持っています。これにより、一貫したブランドメッセージの発信が可能となり、全体的なマーケティング効果を高めることができます。
SNS(Social Networking Service)とは、写真・動画・音声・テキストなどのコンテンツを通じて、社会の様々な人々と関係を構築することができる、オンライン上の手段のことです。
さまざまなSNSがありますが、以下に主要なSNSについて簡単にご紹介します。各SNSプラットフォームについて詳しく知りたい方は、私たちがまとめたSNSについての完全ガイドをご確認下さい。
ここまでSNSマーケティングとは何か、そのメリットなどをご紹介してきました。
そこでここからは実践的な実施方法を解説していきます。
成功への第一歩は具体的な目標を設定することから始まります。ブランド認知度を高めたいのか、ウェブサイトへのトラフィックを増やしたいのか、それともリード獲得が目的なのか。例えば、目標がブランド認知度の向上であれば、その指標としてフォロワー数の増加や投稿のリーチ数を設定します。
どのような目標を立てるべきか迷ったら、「SMARTの法則」を参考にして立てるとよいでしょう。
– Specific:具体的な目標を立てる
– Measurable: 測定できる目標にする
– Achievable: 達成可能な目標にする
– Relevant : 組織全体の目標に関連した目標にする
– Time-bound : 目標達成に時間的な制約を設ける
目標設定の例:次のクォーターでInstagramのフォロワー数を20%増やす。
ターゲットオーディエンスを特定するには、市場調査や既存の顧客データの分析が有効です。ターゲットが若年層ならInstagramやTikTokが適しているかもしれませんし、ビジネス関係者ならLinkedInが適しています。顧客の人口統計情報、関心事、ライフスタイルを理解することで、彼らにとって価値のあるコンテンツを作成できます。
ターゲット特定の例:20-35歳の女性、美容に興味があり、エコ意識が高い。
コンテンツカレンダーを作成して、定期的に品質の高いコンテンツを配信します。コンテンツは多種多様で、画像、ビデオ、インフォグラフィック、ブログ記事などがあります。
重要なのは、ターゲットオーディエンスが関心を持つような価値ある情報を提供することです。例えば、「使い方ガイド」や「業界の最新トレンド」をテーマにした投稿が考えられます。
コンテンツプランの例:週に2回、製品の使用前後の比較写真を投稿する。
インスタグラムやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSプラットフォーマーは、利用者に向けていろいろなヒントを公式ウェブサイトで紹介してくれています。新機能や各種機能の使い方はもちろん、魅力的なコンテンツの作り方などいろんなヒントを得ることが出来ます。
またInstagramはアカウントをビジネスアカウントにするとプロフェッショナルダッシュボードが使え、分析等がやりやすくなります。いずれも無料ですので、ぜひチェックしてみてください。
– Instagramのビジネスユーザー向けページ
– Facebookのビジネスユーザー向けページ
– X(旧Twitter)のビジネス向けページ
– TikTokのクリエイター向けページ
ハッシュタグは、ソーシャルメディアの投稿の認知度を高めるための強力なツールです。ターゲットや皆さんのビジネスに関連性の強いハッシュタグを使用することで、より多くの人々にリーチし、ニッチな分野に関心のある新しいフォロワーを引き寄せることができます。
まずは皆さんの業種や業界で人気のあるハッシュタグをリサーチして、投稿に盛り込みましょう。またターゲット層でよく使われるハッシュタグも有効です。
また、皆さんオリジナルのハッシュタグを作ってお客様や従業員を通じて広めてみましょう。ユーザーや関係者によるコンテンツの作成を促すきっかけとなり、ブランドの認知度を高めることができます。
ただしハッシュタグは控えめに、かつ戦略的に使うようにしましょう。多すぎると投稿がスパムっぽくなり、エンゲージメントが低下してしまいます。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)とはフォロワーや利用客など自社スタッフではない第三者(ユーザー)によって生成された写真、動画、レビュー投稿などのコンテンツのことです。UGCはエンゲージメントを高め、閲覧者との信頼関係を築くのに最適な方法です。
UGCをソーシャルメディア上で共有することで、実在する一般の人々があなたの製品やサービスを使い、楽しんでいることを閲覧者に見せることが出来ます。近年、消費者、特に若い世代では広告等よりも口コミ等他の消費者の声を重視する傾向があるというデータもあります。UGCはまさにこの傾向にぴったりのコンテンツなのです。
UGCを集めるにはマーケティングキャンペーンを行うなどコストがかかったり、難しいイメージがあるかもしれませんが、無料で小さく始めることは可能です。
例えば、お店に来てくれた人や商品を買ってくれた人に、口コミと共に写真や動画を投稿することをお願いすることです。手はかかりますが、良いユーザーの声は次の顧客を呼ぶ最強の武器となることを考えると、ぜひ取り組みたい施策です。
私たちのUGC活用ツールを活用することで、顧客自身が作るコンテンツをマーケティングに効果的に取り入れることができます。
フォロワーとのエンゲージメントを高めるためには、コンテスト、アンケート、Q&Aセッションを実施します。ユーザーが自分の意見や経験を共有できるようなキャンペーンを行い、積極的な参加を促します。さらに、ユーザーが生成したコンテンツ(UGC)を活用して、コミュニティの一員としての感覚を強化します。
エンゲージメントの例:フォロワーが自分の体験を投稿するハッシュタグキャンペーンを開始する。
SNSの組み込み分析ツールを使用して、どの投稿が高いエンゲージメントを得ているかを測定します。フォロワーの増加数、リーチ、インプレッション、クリックスルー率などの指標を追跡し、これらのデータをもとにコンテンツの方向性を調整します。
例えば、ある投稿が予想以上の反響を得た場合、そのフォーマットやテーマを他のコンテンツにも応用するのです。
分析と改善の例:投稿ごとのエンゲージメント率を測定し、最も反応が良かったコンテンツを次の月も継続して投稿する。
ここでは実際に有名企業が行ったSNSマーケティングについて事例を見ていきましょう。
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた当時、Airbnbの将来は暗澹たるものに見えました。多くの旅行が中断された結果、予約のキャンセルで10億ドルの損失を出したからです。その結果同社はIPOの準備を延期し、2,000人以上の人員削減を余儀なくされました。
しかしその後、予約の90%減という状況から7月の消費者支出が前年比22%増となるなど業績を回復することができました。それを支えたのが、#GoNearキャンペーンでした。
このキャンペーンは、近距離旅行分野の市場拡大を促進するための新たな試みでした。同社が保有する予約データや顧客調査から、自宅から300マイル以内(車で1日以内)の小旅行へのニーズが高まっていることを突き止めたことが、成功の要因でした。
pick one: wfh edition.
which spot would you want to work from? pic.twitter.com/8NT2618NPZ
— Airbnb (@Airbnb) August 31, 2020
このキャンペーンは、すべてのSNS/ソーシャルメディアで展開されたUGCキャンペーンの中で、おそらく最も優れた事例の1つでしょう。
Appleの「Shot on iPhone」キャンペーンは、iPhoneユーザーの画像を世界中のビルボードに掲載し、同社のソーシャルメディアチャンネルで共有するという、分かりやすいユーザー生成コンテンツ(UGC)チャレンジとしてスタートしました。
キャンペーンが開始されユーザーが素晴らしい画像や動画を作成し始めると、集まった素材はiPhoneのカメラの信頼性を大きく高めることになりました。このキャンペーンは現在も継続しており、Instagramだけで2,000万件の投稿を記録しています。
Appleは、iPhone 6のカメラに注目を集めたいと考えていましたが、同時に、若くて独創的な企業としてのイメージを浸透させたいとも考えていました。同社は、新しいユーザーにAppleのユーザーコミュニティーに参加する高揚感を体験してもらい、同時に既存のユーザーにも製品の発表に参加し、楽しんでもらいたいと考えています。
2020年にビデオ会議の業界標準となったZoom。多くの人々がそれぞれの在宅勤務環境のもとビデオ会議に参加しましたが、会議に適した背景がすぐに整ったわけではありませんでした。子供が走り回ったり、ベッドメーキングを忘れた寝室の様子などが背景に移り込んでしまったため、多くのユーザーにとってバーチャルな背景が重要になりました。Zoomはこれを利用し、The Virtual Backgroung Contest(バーチャル背景コンテスト)を企画しました。
このコンテストは、ユーザーが自分たちでデザインした面白い背景を共有するために開催されました。Zoomは、コンテスト応募用のランディングページを作成するとともに、Twitterのアカウントも別に用意し、優秀作品を紹介しました。また、ユーモアのあるマーケティングでバーチャル背景の機能を顧客に伝え、このプログラムへの関心を高めました。
BuzzFeedの「Tasty」は、食欲をそそるショートムービーを中心に、時間をかけずに簡単に調理する方法を紹介しています。「Tasty」ソーシャルメディア・マーケティング・キャンペーンがリリースされると、おいしそうな料理の動画の数々がFacebookユーザーの間で話題沸騰となりました。この主にFacebook向けに作成されたTastyの動画は、驚くべき結果をもたらしました。キャンペーンの動画は数百万回の再生、1億以上のFacebookの「いいね!」を獲得し、2000以上の料理動画のレシピが提供され、そして月間5億人のリーチを見込むなど、大きな反響を呼びました。
Tastyの動画クリップは、Facebookの自動再生機能と連動するように調整され、音声なしで動画の再生が開始されるように設定されました。BuzzFeedは、Facebookのアルゴリズムが他の種類の素材よりも動画コンテンツに適していることに気づき、おいしいものをすぐに食べたい視聴者のために、短く、そして文字通り’甘い’映像を制作し、成功したのです。
スターバックスには、注目すべきソーシャルメディアキャンペーンがたくさんあります。#UnicornFrappuccino は、その中でも特に人気のあるものの一つです。2017年4月、ユニコーンフラペチーノは3週間しか販売されなかったにもかかわらず、その効果はずっと長く続きました。甘くてカラフルなこのドリンクは、SNSで広く拡散されました。
スターバックスは、熱心な消費者が投稿してくれることを想定して、SNSを意識した限定商品を企画しました。Instagramのハッシュタグ「#unicornfrappucino」だけでも、すでに154,000枚以上の写真が投稿されています。そのほとんどがこのスターバックスの限定商品の写真であり、これは限定商品の効果がいかに長く続くかを物語っています。
Spotify Wrapped(Spotifyまとめ)キャンペーンは、同社のバイラルマーケティング(*)にとって大きな成功を収めた事例となりました。それは、年末にユーザーに、ユーザーが過去1年間に聴いたすべての曲、好きなアーティスト、最も時間をかけて聴いたジャンル、リスナーが聴いたことのあるアーティストのトップ5などが表示された壁紙を配布するという企画でした。
(*)バイラルマーケティング・・・SNS上などで口コミによって不特定多数の人々の間に話題が広まるように促すマーケティング手法のこと
この企画は単なるマーケティングキャンペーンではなく、SNSを使ったバイラルマーケティングの観点からも重要な事例と言えるでしょう。
年末になると、各ユーザーにSpotifyから届くこのメールは、多くのユーザーの間で長年愛され、世界中の音楽好きの人々やオーディオマニアにとって、ある種の年中行事化しています。
この種の広告は、とてもよくパーソナライズされていることが人気の理由です。テクノロジーの発達により、各個人の状況に応じた情報提供が可能となり、それは明らかな効果を発揮します。Spotifyの今日のブランドは、パーソナライゼーションによって作られたとも言えるでしょう。
Source: Spotify
ユニリーバが所有するブランドであるダヴは、昨年のインパクトのある「Reverse selfie(リバースセルフィー)」キャンペーンに続き、多くの子供たちがソーシャルメディアを通じて触れている有害な美容に関するアドバイスについて警鐘を鳴らす、印象的な新しい動画を制作しました。
キャンペーンでは複数の母娘が、Instagramなどのアプリケーションで見られる一般的な化粧品のアドバイスについて会話している様子が記録された「Toxic Influence」という動画が公開されました。さらに、#DetoxYourFeedキャンペーンを開始し、ソーシャルメディアで情報が拡散されるよう促しました。
これは、企業の社会的責任を示す素晴らしい事例です。同ブランドが行った調査によると、10人中7人の女性が、ソーシャルメディア上の理想化された美に関する情報や投稿のフォローをやめた結果、精神的に楽になったと報告したそうです。この「#DetoxYourFeed」イニシアティブは、若者が自分に自信を持てなくなりそうなコンテンツはすべてフォローをやめること、美の基準は自分で決めること、自分にとって良い影響を与えてくれる情報を見極める能力を持つことを勧めています。
パンデミックは、人々のクリエイティブなマインドを爆発させるきっかけになったようで、2020年はよいマーケティング事例が多く存在します。Netflixの例もその一つです。未曾有の試練に直面したとき、Netflixは人々を支援し、視聴者とのより深いつながりを確立するために、ソーシャルメディアに目を向けました。
同社はこのキャンペーンで、メンタルヘルスの専門家とチャットし、質問をしたり、問題を話し合ったりすることができるInstagram Liveシリーズを開始しましたが、このようなアプローチで顧客とつながりを構築できた企業は、一時的な危機が去った後も顧客とつながりを維持でき、長期的に利益を得ることができます。
この事例はブランドの認知度と消費者のロイヤリティを高めるための優れた施策と言え、有益なキャンペーンでした。多くの人々が困難に直面しているときは、人々が参加できる対話の機会を設け、消費者とのつながりを強化し、長期的なコミットメントを促しましょう。
Daniel Wellingtonは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)をソーシャルメディア上で活用する術をマスターしている企業の一つです。彼らは、Daniel Wellingtonの時計を身につけたクライアントの画像をよくリポストしていますが、それだけでなく、人々から注目を得るための仕掛けを仕組んでいます。
彼らは、素晴らしい場所で撮影された写真をアップロードし、それがどこで撮影されたかを視聴者に推測してもらうことで、ソーシャルメディアのコンテンツ戦略にひねりを加えているのです。
他の企業の例と同じように、ただ顧客が撮影した写真を再投稿しているのですが、彼らはそれをたわいもない推理ゲームに変えることで、投稿にゲーミフィケーションの要素を追加しました。
結果としてより多くの人がこの写真にコメントしたり回答したことで、通常よりも投稿へのインタラクションが増えました。
Gilletteは2019年1月、男性であることの意味を再定義しようとするソーシャルメディアキャンペーンを開始しました。
YouTube上で公開された短編の動画では、Gillette自身がこれまで賞賛してきた従来の男らしさに対して、自分の感情を表現できない姿、性犯罪、他人へのいじめ行為など、現実の世界で男性が苦悩する姿が映し出されています。そしてそのような現実を踏まえた上で、他人のために声を上げる、家族を大切にするといった、現代の価値観に寄り添った男らしさの定義を、動画の中で訴えています。
このキャンペーンは、現在進行形で熱い議論が交わされているテーマを取り上げることに成功しました。
そしてGilletteは、同社が以前に行っていたブランディングと新しいブランディングを対比させ、同社が現在の価値観に適応する用意があることを示しました。
一方でこのキャンペーンには賛否両論があり、動画の中での男性の表現方法が侮辱的だと感じる人々もいました。その結果、Gilletteはさらに注目を集め、メディアで取り上げられるようになりました。
2017年、Worldwide Breast Cancerという団体が、とてもクリエイティブでバイラルな(口コミで広がりやすい)キャンペーンを企画しました。女性の乳がんのさまざまな症状に対する認識を高め、しこりだけが病気発見の指標ではないことを広めるためのキャンペーン「#KnowYourLemons」です。
このキャンペーンでは、広告の規制を回避するために女性の胸そのものを見せることはせずに、レモンを使って12の様々な症例を表現し、女性が胸の検査することへの恐怖を克服できるよう支援しようとしました。
このキャンペーンは社会的に重要な問題を取り上げましたが、ユーモアと深刻さの絶妙なバランスを実現することに成功しました。センシティブなテーマであっても伝え方の工夫によって適切なオーディエンスを惹きつけることができるという良い事例でしょう。
オレオは、同製品のファンの直近のツイートを分析した結果、人々の性格に関する情報を含みカスタマイズされた「オレオスコープ」というコンテンツを提供するキャンペーンを実施しました。星座や占いへの人々の関心に注目し、星占いとブランドの製品を結び付けてみたのです(オレオ+ホロスコープ)。
この事例もパーソナライゼーションの好例と言えます。人々に特別感を与え、決して時代遅れになることはありません。同社は、大変多くのオレオスコープを発信していますが、自分に向けて発信されたコンテンツを手に入れることは、消費者にとっては特別なことであり、その結果を他の人と共有したくなるものです。
SNSマーケティングは、企業がブランドを構築し、顧客との関係を深めるための強力なツールです。正しい戦略と実践により、中小企業でも大きな成果を上げることが可能です。
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